経済産業省「令和6年度医療機関におけるPHR利活用推進等に向けた実証調査事業」成果報告
株式会社カケハシ（本社：東京都港区、代表取締役社長：中尾 豊、代表取締役CEO： 中川 貴史、以下、当社）は、経済産業省「令和6年度ヘルスケア産業基盤高度化推進事業（医療機関におけるPHR利活用推進等に向けた実証調査事業）」（以下、本事業）の実証事業者として、2024年度の成果を取りまとめ、報告しました。本事業では、全国4か所のフィールドで地域医療を支える中核病院・大学病院や薬局が連携し、外来通院中のがん・心不全患者214人を対象に、抗がん剤の服用による有害事象の発生や心不全の再増悪に関するモニタリングと患者フォローを実施。結果として、病院・薬局間の情報連携数が増加し、患者さんの生活の質向上や予後改善への貢献可能性が示唆される結果を得ました。今後は、これらの取り組みが治療効果に与える影響についてさらなる検証を進め、学術的なエビデンスの確立と発信に努めます。そのうえで、中長期的には対象疾患や医療機関の拡大に向けた検討を進め、より多くの患者さんの治療に貢献することを目指します。
国内では、医療従事者による治療やケアが、主に各医療機関において提供されています。一方で、退院後や受診から次回受診までの期間においては、医療従事者による介入が届きづらく、服薬による有害事象の発生や疾患の再増悪などさまざまなリスクにつながる要因の一つとなっています。
こうした問題を解決する手段として、患者さんに対する症状の継続的なモニタリングとフォローの充実が期待されています。しかし、多忙な医療従事者にとっては負荷が大きく、現場で十分に実施するには難しい現状があります。
当社が提供する患者フォローシステム「Pocket Musubi」は、各処方状況に応じた質問を自動送信し、患者さんの回答から服薬に関する問題を検知した場合には、薬局薬剤師へ通知することで、効率的な服薬期間中フォローを支援しています。また、関連サービスであるクラウド型電子薬歴「Musubi」には、フォローを通じて得た患者さんの情報をもとに病院と連携するトレーシングレポート作成機能を備えており、医師の治療方針の検討に役立てることで、有害事象の重篤化を防いだ事例なども生まれています。
当社は、上記のような病院・薬局間の連携をより強化することで、医療従事者に過剰な負担をかけることなく、患者フォローのさらなる効率化と質の向上に寄与することを目指し、本事業を実施しました。
本事業の公募概要はこちら：https://www.meti.go.jp/information/publicoffer/kobo/2024/k240509001.html
本事業では、外来治療を受けているがん・心不全の患者さんを対象に、抗がん剤による有害事象の重篤化や心不全の再増悪を未然に防ぐことを目的として、医療機関と連携した患者モニタリングとフォローを実施しました。
具体的には、Pocket Musubiの一部機能を発展させたパイロットツールを活用し、患者さんのスマートフォンに対して週1回、がんでは有害事象の発生有無、心不全では症状変化やセルフケア行動などに関する質問を自動送信しました。患者さんの回答内容に基づき、あらかじめ設定した基準値を超えるスコアが検知された場合には、医療従事者にアラートを通知し、薬局と病院の間で情報共有の上、患者フォローにつなげました。埼玉医科大学国際医療センター、自治医科大学附属病院、聖隷浜松病院と浜松医療センター、倉敷中央病院をそれぞれ中心とする4か所のフィールドで、病院や複数の薬局とコンソーシアムを組成し、事業を推進しました。
コンソーシアム参加者（実証フィールドごと）：
（1）埼玉医科大学国際医療センター、アポクリート株式会社
（2）自治医科大学附属病院、株式会社アインホールディングス、クラフト株式会社、
株式会社ココカラファインヘルスケア、日本調剤株式会社
（3）聖隷浜松病院、浜松医療センター、株式会社杏林堂薬局
（4）倉敷中央病院、ウエルシア薬局株式会社、総合メディカル株式会社、株式会社マスカット薬局
※薬局法人名は五十音順
患者組み入れ期間：2024年9月24日～2025年1月31日
※組み入れ開始日は各フィールドごとに異なりますが、本記載では最も早い開始日を起点としています。
本事業には、がん患者168人、心不全患者46人を含む、合計214人の患者さんが参加しました。スマートフォンを活用する取り組みでありながら、高齢の患者さんの利用も見られ、65歳以上が全体の34％を占めました。送付質問への回答率は、1～12週目の平均で、がんで79%、心不全で67%と高い数値を維持しました。
また、がんを対象としたフィールドでは、総回答数のうち41%で、基準値を上回る有害事象を検出しました。内訳として、皮膚症状、下痢、痛みなどが多く検出されたほか、従来は医療従事者が把握しづらかった手足のしびれや不安といった有害事象も検出することができました。心不全では、総回答数の40%で症状変化やセルフケア行動に関するアラートを検出しました。
加えて、本事業を通じて、病院と薬局間の情報連携も大きく活性化しました。がんを対象としたフィールドにおいては、事業開始前と比べて、1か月あたりの平均フォロー件数が約3.2倍（41件→130件）、トレーシングレポート数が約4.5倍（25件→110件）、処方提案件数は約12倍（2件→26件）に増加しました。
これに伴い、薬局薬剤師ががん患者に対して薬学的介入を行った際に算定できる「特定薬剤管理指導加算2」や、病院薬剤師による外来がん患者への介入により算定される「がん薬物療法体制充実加算」の算定実績も増加しました。
心不全を対象としたフィールドにおいても、フォロー件数は1か月平均で従来の8倍（0.5件→4.0件）に増加し、トレーシングレポートも0件から2件へと伸長しました。また、薬局薬剤師が心不全患者に対して薬学的介入を行った際に算定可能な「調剤後薬剤管理指導料2」の算定数が増加した薬局も確認されました。これらの成果は、実施施設における取組み継続の後押しとなりえるものといえます。
さらに、患者さんの治療効果に寄与する可能性も示唆されました。がんフィールドでは、患者さんの生活の質を表す「健康関連QoL」において改善傾向を確認。心不全フィールドでは、再入院の抑制に寄与する可能性が示されました。※
※平均年齢：モニタリング群 66歳、モニタリング未実施群 81歳
退院後60日以内での再入院率を、モニタリング未実施群（n=164）、モニタリング群（n=18）で比較したもの
報告書の詳細はこちら（該当部分はスライド202枚目〜287枚目 )：
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/r6_iryou_houkokusho.pdf
本報告は、研究全体の中間データに基づくものです。現在もモニタリングを継続しており、最終的な実証成果については、今秋以降、関連学会等にて順次発表する予定です。あわせて、より多くの患者さんの治療に貢献することを目指し、対象疾患や連携する医療機関のさらなる拡大も視野に入れ、検討を進めてまいります。
「Pocket Musubi」は、患者さんに「またこの薬局に行きたい」と感じていただけるような薬局体験を提供するための、LINEアプリ経由で利用できる患者フォローシステムです。
患者さんの服薬状況からフォローすべき患者さんをスクリーニングし、薬剤師が適切なアクションを負荷を抑えながら行えるようにする「服薬期間中フォロー機能」や、患者さんが来局前に処方せんの画像を送って薬局内の待ち時間を短縮することのできる「処方せん送信機能」など、患者さんが安心・便利に薬局を利用できるための機能を提供しています。
サービス紹介 https://musubi.kakehashi.life/pocket-musubi
株式会社カケハシは、日本の医療システムの再構築を目指すヘルステックスタートアップ企業です。テクノロジーを駆使し、患者さんにとってより良い医療を、医療現場にとって継続可能な形で実現します。現在、クラウド型電子薬歴「Musubi」のほか、複数プロダクトを開発・提供し、グループ全体で国内の薬局の14,000店舗超をカバー。服薬期間中の患者フォローによる治療効果最大化や、医薬品の市中在庫可視化・安定供給などをサポートします。薬局や医療機関をはじめとした多様なステークホルダーとともに、より良い医療を実現するプラットフォームを構築していきます。
＜会社概要＞
会社名 株式会社カケハシ
設 立 2016年3月30日
所在地 東京都港区西新橋二丁目8番6号 住友不動産日比谷ビル5階
U R L https://www.kakehashi.life/
＜本件に関する問い合わせ先＞
株式会社カケハシ 広報・PR
メール: pr@kakehashi.life
電 話: 03-6825-2058
